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世界都市総合力ランキングに関する研究(2008年版)
Global Power City Index

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研究概要

「Global Power City Index」は、地球規模で展開される都市間競争下において、より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける力こそが「都市の総合力」であるとの観点に立ち、世界の主要都市について森記念財団独自の調査を行い、総合力を評価し順位付けするものです。都市の総合力をランキングする調査としては日本初の取り組みとなっています。また、既存のランキングのほとんどが、特定分野もしくは国別のランキングであるのに対し、都市のチカラを表す様々な分野を対象として都市の総合力を評価したランキングとなっています。

調査方法として、 2008年度においては世界を代表する主要30都市を選定し、都市の力を表す主要な5分野(「経済」「研究・開発」「交流・文化」「居住・環境」「空間・アクセス」)における63の指標に基づいて評価を行いました。さらに現代の都市活動を牽引する4つのグローバルアクター(「経営者」「研究者」「アーティスト」「観光客」)ならびに都市の「生活者」を加えた合計5つのアクターに基づき、これらのアクターのニーズと都市の指標を重ねたマトリックスから複眼的にアクター別の都市の魅力を評価しました。このように都市を分野ごとに客観的に評価しながら、アクターという都市の利用者の視点に基づく評価を同時に行っている面で世界的にもユニークな調査・研究となっています。

調査・研究の推進にあたり、都市評価に関する世界的権威であるピーターホール卿をはじめとする学識者や各界の識者等が参画し、さらに第三者のピアレビュー(専門家による評価)を受け、ランキングに客観性を保つようにしています。

調査・研究組織

主体 メンバー 役割
最高顧問

ピーターホール卿
ロンドン大学
バートレット校教授

委員会
委員長
竹中平蔵 / 慶應義塾大学教授
委員
  • リチャード・ベンダー
    カリフォルニア大学名誉教授
  • サスキア・サッセン
    コロンビア大学教授
  • 市川宏雄 / 明治大学教授
ランキング作成の
スーパーバイズ
第三者評価員
(ピアレビューアー)
アレン・J・スコット / UCLA教授
ピーター・ネイカンプ / フリー大学教授
成果についての評価
各界の
有識者パートナー
各界の有識者 アクターの視点に
係る助言
ワーキンググループ
主査
市川宏雄 / 明治大学教授
構成員
財団法人森記念財団
株式会社三菱総合研究所
ランキング作成作業

GPCI-2008 総合ランキングTOP5






2008年度調査におけるFINDINGS

分野別総合ランキング

2008年度 分野別総合ランキング


分野別総合ランキングのトップ3はニューヨーク、ロンドン、パリでした。
東京は総合ランク4位ながらも、スコアではトップ3にかなりの点差をつけられており、世界の都市のトップ集団最後方に位置する都市であるともいえ、200点前後に多くの都市がひしめく第2グループのトップに位置する都市であるとも言える結果が出ました。

分野別ランキング

2008年度 分野別ランキング


「居住・環境」分野および「空間・アクセス」分野におけるフランクフルト、アムステルダムやベルリンなど、総合ランクで下位でも特定の分野では上位にランクされ優位性を発揮する都市が存在しました。
アジアには「経済」分野に特化した都市が多い一方で、欧州には「交流・文化」「居住・環境」「空間・アクセス」分野で上位にランクされている都市が多く存在しました。

アクター別ランキング

2008年度 アクター別ランキング


都市活動の表舞台で活躍する4つのグローバルアクター、都市生活者、いずれのアクターからみても、魅力的な都市はニューヨーク、ロンドン、パリであると言える結果が出ました。これらの都市は総合スコアでも他の都市を引き離しており、オールマイティな魅力を備えた都市です。 アジアの都市は「経営者」を除く各アクターにとって、30都市中21位以下にランクされる都市数が5割以上を占め、特に「生活者」からの評価が著しく低い都市が多く存在しました。

分野別ランキングとアクター別ランキングの関係

GDPや企業集積などの「経済」指標が高い都市が、必ずしも「経営者」にとって魅力的な都市であるとは限らない、という結果が出ました。

東京と総合ランクトップ3都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ)との比較

東京は、分野別では「交流・文化」「空間・アクセス」が著しく劣っていました。
アクター別では、「研究者」では他都市に比肩する評価を得られているものの、その他のアクターからの評価は低く、特に「経営者」と「観光客」ではトップ3都市から大きく引き離されていました。

東京とアジアの主要経済都市との比較

東京はアジアの他の主要経済都市と比較して、「研究・開発」の分野は極めて優位性があるが、「居住・環境」や「空間・アクセス」ではアジアの諸都市に比べて特に優位性がありませんでした。
アクター別にみても「研究者」からの評価は高いものの、「経営者」や「観光客」にとっての評価はアジアの中でも低い結果となりました。

世界の主要都市と比較しての東京の課題

「経営者」に魅力的な都市とするための東京の課題は、規制や税率などの面でビジネスの容易性を向上させることや災害危険度の低減等、ビジネスをとりまく環境の改善であると言えます。
「観光客」に魅力的な都市とするための東京の課題は、ハイクラスホテルをはじめ、外国人にきちんと対応できるホテルの充実や魅力的な観光資源を充実させること等、観光をとりまく環境の改善であると言えます。

分野別ランキング算出方法(GPCI2008)

まず最初に都市における5つの主要分野について評価を行うための要素について検討します。


次にそれぞれの要素に基づいて具体的な数値としての評価を出すための指標を設定します。指標は世界において公表されている統計や、インタビュー調査や現地調査を含む森記念財団が独自に行った調査に基づく合計63の指標から成っています。

最終的にそれぞれの指標に基づくスコアを分野ごとに集計して分野別スコアを算出して、それらを合計したものが総合スコアになります。

アクター別ランキング算出方法(GPCI2008)

まず最初に都市におけるそれぞれのアクターについてのイメージ像を描きます。


経営者

ビジネスマン
(50才、男性)
  • グローバルに展開する外資系企業の現マネージャー職
  • 家族は妻と子供2人
  • マネージングダイレクターとしてアジア拠点への転勤を打診された。
  • 候補地は東京、上海、香港、シンガポール

研究者

研究者
(30才、男性)
  • 留学先で博士課程に在籍。
  • 同じ博士課程に在籍中の妻と昨年結婚。
  • 博士課程修了を控え、在籍している大学に残るか、他の研究所に移るか、帰国して研究職を探すか検討している。

アーティスト

アーティスト
(23才、女性)
  • ドイツ生まれ、東京育ち、独身。
  • 芸術大学大学院生だが、卒業を目前に控え、プロのアーティストを目指す決意。
  • 各国に友人がおり、どこで創作活動をするのが、自分の作品を理解してもらうのに一番かを思案中。

観光客

観光旅行者
(25才、女性)
  • 日本の企業に勤めるOL
  • 趣味は旅行
  • 就職して数年たち、資金的にも余裕が出てきたため、年間で数回の海外旅行をしている
  • 夏休みを前に、海外旅行の行先を検討

生活者

都市住民
(35才、男性)
  • この都市で生まれ育った
  • 幸い生まれ育った都市に拠点を置く企業で仕事が見つかり就職
  • 幼馴染と結婚し、現在2歳の息子がいる
  • 結婚、出産を終えて次は家の購入を考えている
  • この都市で買うか、他の都市へ引っ越すか検討中

次にそれぞれのアクターが都市を選択するにあたって直面する課題を抽出します。


経営者

  • 今度の転勤話は自分にとってキャリアアップの大きなチャンス。さて、どの場所に赴任するのがベストか?
  • ・大きな業績をあげて、さらに上を目指すには、やはりビジネス機会が大きいほうがいい。となると、ビジネスの規模成長性がポイントか。
  • ・スムースなビジネスのためには規制がゆるやかなどの、ビジネスの容易さも重要だ。各国拠点や本国との行き来も頻繁になるだろう。
  • ・MDとして赴任する以上、大人数のローカルスタッフをマネジメントしていかないといけないな。優秀な人材や現地のビジネスパートナーは確保できるのか?
  • ・家族と一緒に赴任するのが大前提だ。治安はもちろん、公害や子供の学校とか、生活環境もチェックしないと。

研究者

  • 研究で得られた知見を活かし続けたい。どこでなら、自分の研究を安心して続けられ、深めていくことができるだろう。
  • ・研究成果を上げるためには、同分野の研究が進んでいる機関のほうが、設備も整っているし、優秀な教授陣がそろっていれば、さらに研究を深めることができる。研究機関・研究者・指導者の質が最も重要か。
  • ・他の研究者や研究成果の情報を得られる機会が多ければ、自分の研究の刺激にもなる。研究環境(学会、研究者のネットワーク)も大切だ。
  • ・落ち着いて研究するためには、研究費助成や生活費補助のような優秀な研究者の受け入れ態勢(支援制度)卒業後の可能性(就職等)が高い方が良い。
  • ・妻もしばらくは研究を続けると言っているし、ある程度の娯楽もあり、研究書籍をすぐに得られるような店舗があるなど、生活環境も確認したい。

アーティスト

  • アーティストとして認知されるには何が必要か?才能と運、これは自分にはある、そう信じるしかない。
  • ・製作活動の拠点が必要だ。それなりの広さがいるけど、売れるまでは貧乏。安く生活できる製作環境は、どこで確保しよう。
  • ・創作するには、創作意欲をかきたてられる文化的刺激が欠かせない。同業者から受ける刺激も励みになる。
  • ・自分の作品を発表する場所が多いほど、チャンスが広がる。発表の場が多いということは、他の人の作品を見る機会が多いということでもある。それだけ刺激が受けられる。
  • ・作品が認められ、購入される場はあるだろうか。コレクターやキュレーターの目に留まれば、自分の作品が高く売れることも夢じゃない!

観光客

  • せっかくの長期休暇、どうせなら世界中の地域、都市から候補をあげて、厳選したい。旅行する価値のある都市はどこか?
  • ・仕事を忘れて非日常的な経験をしてみたい。普段、日本にいては体験できないような雰囲気を持つ都市が良いだろう。それに、治安が良いことも重要。
  • ・テレビや写真で見たような歴史遺産や文化遺産にも行ってみたい(観光目的地)。
  • ・それに折角の旅行なんだから、ホテルもしっかり選びたい。そこそこキレイでリーズナブルなところ。やはりホテルの選択肢が多いことは重要。
  • ・あとは、食べ物がおいしい国はやはり魅力的。世界に認められるようなレストランがある都市が良いだろう。
  • ・見るモノを見て、食べるモノを食べたら、最後はショッピング。日本で中々手に入らないブランド品やお土産品を買って帰りたい。

生活者

  • 今まで何の疑いもなくこの都市で生活してきたが、本当にこの都市で永住するべきか?そもそも日々の生活で重要な事は何だろう?
  • ・最も大切なのが、適当な物価住む場所(住環境)の快適さだろう。
  • ・大儲けしなくても良いが、生活できるだけの給料が貰える仕事(雇用機会、賃金)も必要だ。
  • ・子供の将来を考えると、教育環境も需要だ。必要最低限の教育は受けさせたい。
  • ・あとは休暇や余暇を楽しむ施設や環境が整っていれば、一通り満足のいく生活が送れるのではないか。
  • ・あとは、家族が安全・安心に暮らせるかどうか。犯罪は少ない方が良いし、総合病院だってあった方が良い。

それぞれの課題に応じてアクター別に都市の評価基準を設定してゆきます。


経営者

  • ■企業や商取引等の一定以上の集積
  • ■ビジネスの成長性
  • ■ビジネスの容易性(規制含)
  • ■ビジネス環境
  • ■人材プール(人材の豊富さ)
  • ■関連サポート産業の集積
  • ■家族及び従業員のとっての良好な生活環境
  • ■政治・経済・災害リスク

研究者

  • ■質の高い研究機関、研究者、指導者の存在
  • ■研究機関や研究者の集積
  • ■研究活動における発想や思考に対して刺激となる空間・機会の存在
  • ■受け入れ態勢(研究費助成や生活費補助など)
  • ■自らの研究分野における就業機会
  • ■日常生活の環境(住みやすさ)

アーティスト

  • ■文化的刺激
  • ■アーティストの集積
  • ■マーケットの存在
  • ■創作環境(スタジオ、アトリエ賃料、広さなど)
  • ■日常生活の環境(住みやすさ)

観光客

  • ■文化的魅力や接触機会
  • ■安全
  • ■観光の対象の存在(施設、文化等)
  • ■一定水準以上の宿泊施設
  • ■食事の選択肢や値段等
  • ■ショッピング環境(値段や魅力等)
  • ■目的地までの移動の利便性(所要時間、運賃等)

生活者

  • ■購買環境価(物価、商品の得やすさ等)
  • ■生活環境(住環境などの日常生活のしやすさ等)
  • ■就業環境(賃金、雇用機会等)
  • ■教育環境
  • ■余暇活動
  • ■安全・安心(治安・医療の充実)

次に評価基準に対応する評価指標を都市のそれぞれの機能を評価する63の指標にあてはめて選択します。


【経営者スコア】47指標

【研究者スコア】25指標

【アーティストスコア】25指標

【観光客スコア】25指標

【生活者スコア】38指標

最終的にアクターごとの指標にもとづくスコアを集計して、アクター別のスコアを算出します。

2009年度のGPCIの展開

世界的な金融危機やエネルギー危機にともなう社会構造の変革をうけて、グローバル・シティの役割は今後ますますクリティカルなものになって行くと考えられます。このような潮流のなかで東京が担うべき役割についてさらに追及するべく、昨年度に引き続きGPCI-2009研究会の立ち上げを行いました。

今年度は調査対象都市を35都市に増加し、新たな評価指標や評価手法を盛り込んでランキングの更新を行っており、2009年秋に発表を予定しています。今回の調査ではとくに、近年都市の重要な要素として注目されている環境に関する指標を重視しながらランキングの作成を行ってゆきます。

さらに、東京のグローバル・シティとしての構造的な要因を探るために、本研究のコミッティであるサスキア・サッセン教授が提唱するグローバル・サーキットという概念にもとづく分析・評価に取り組む予定です。

また、GPCI-2009の結果に基づいて世界及びアジアの上位ランキング都市をピックアップし、都市機能の指標ごとにさらに深く分析を行いそれぞれの都市の持つチカラについての隠された要因を明らかにしてゆきます。

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GPCIの過去のレポート

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